VLANは、ネットワークを学び始めた人が最初につまずく技術のひとつです。「仮想的にLANを分ける」と説明されても、実際にどう動いているのかイメージしづらいと思います。
この記事では、現役10年のネットワークエンジニアとして、VLANの仕組みを基礎から解説したうえで、現場で本当にハマるポイントまで踏み込みます。教科書には載っていないけれど、実務では必ずぶつかる話です。
CCNAの学習者にとっても、試験(ネットワークアクセス分野、出題比率20%)で問われる内容と現場の実感をつなげる助けになるはずです。
VLANとは:1台のスイッチを、複数のスイッチに分ける技術
VLANは「Virtual LAN(仮想LAN)」の略で、1台の物理スイッチを、あたかも複数のスイッチがあるかのように論理的に分割する技術です。
たとえば、営業部と開発部で通信を分けたいとします。VLANがなければ、物理的にスイッチを2台用意して配線を分ける必要があります。しかしVLANを使えば、スイッチ1台の設定だけで「営業部用のネットワーク」と「開発部用のネットワーク」を作り分けられます。

ケーブルを繋ぎ直さず、設定だけでネットワークを分けられる——これがVLANの本質です。ここから先の“落とし穴3つ”が、現場だと本当によく起きるやつです。
技術的に言うと、VLANはブロードキャストドメインを分割します。同じVLANに所属するポート同士は通信できますが、異なるVLANのポートとは(そのままでは)通信できません。
VLANは1〜4094の番号(VLAN ID)で識別され、たとえば「VLAN 10は営業部、VLAN 20は開発部」のように割り当てます。
アクセスポートとトランクポートの違い
ここが初学者の最初の関門です。実際、後輩を見ていても、この2つの違いでつまずく人はとても多いです。
アクセスポート:1つのVLANだけを扱う
PCやサーバーなど、末端の機器を接続するポートです。「このポートはVLAN 10」というように、1つのVLANだけを割り当てます。接続された機器は、自分がVLANに所属していることを意識する必要がありません(タグが付いていない、素のフレームをやり取りします)。
トランクポート:複数のVLANをまとめて運ぶ
スイッチ同士を接続するときに使うポートです。1本のケーブルで複数のVLANの通信をまとめて流します。このとき、どのVLANの通信なのかを見分けるために、フレームにVLANタグ(IEEE 802.1Q)を付けます。受信側のスイッチは、このタグを見て「これはVLAN 10の通信だ」と判断します。
ざっくり言えば、末端の機器につなぐのがアクセスポート、スイッチ同士をつなぐのがトランクポートです。まずはこの理解で十分です。
【現場の落とし穴①】VLANミスマッチ
ここからが、教科書にはあまり書かれていない実務の話です。
設定作業をしていると、どうしても自分が触っている機器だけに意識が向きがちです。しかしVLANは両端がセットで初めて成立する設定だということを、常に頭の片隅に置いておいてください。「設定は入れたのに通信が飛ばない」というとき、まず疑うべきは対向機器の設定です。
【現場の落とし穴②】VLAN 1をそのまま使わない
Ciscoのスイッチは、初期状態ですべてのポートがVLAN 1に所属しています。何も設定しなければVLAN 1で通信できてしまうので、初心者はつい「じゃあVLAN 1のまま使えばいいのでは」と考えがちです。
【現場の落とし穴③】アクセスポイント(AP)宛のVLAN設定
意外と見落とされがちなのが、無線LANのアクセスポイント(AP)を接続するポートの設定です。
APは、業務用SSIDとゲスト用SSIDのように、複数のネットワークを1台で扱うことがよくあります。この場合、APを接続するスイッチのポートは複数のVLANを通す必要があるため、アクセスポートではなくトランクポートとして設定することになります。
「PC(末端機器)はアクセスポート」という理解だけでAPも同じように設定してしまうと、特定のSSIDだけ通信できない、という事象が起こります。無線を扱う現場では必ず押さえておきたいポイントです。
VLAN間で通信するには:L2スイッチとL3スイッチの違い
VLANでネットワークを分けると、異なるVLAN同士は通信できなくなります。では、営業部(VLAN 10)から開発部(VLAN 20)のサーバーにアクセスしたい場合はどうするか。ここで必要になるのがVLAN間ルーティングです。
ここも初学者がつまずくポイントで、L2スイッチとL3スイッチの違いが理解できていないと、「VLANを分けたら通信できなくなった。どうすればいいの?」と行き詰まります。
- L2スイッチ:MACアドレスを見てフレームを転送する。VLANを作ることはできるが、VLAN間のルーティングはできない。
- L3スイッチ:IPアドレスを見てルーティングできる。VLAN間ルーティングが可能。VLANごとに仮想のインターフェース(SVI)を作り、そこにIPアドレスを設定することで、VLAN間の通信を中継します。
実際のネットワーク設計では、L3スイッチをネットワークの中心に置き、そこでVLAN間のルーティングとアクセス制御を行い、その配下にL2スイッチを配置してクライアントを接続する、という構成が定番です。
OSI参照モデルのL2とL3の違いが理解できていると、この話はすっと入ってきます(OSI参照モデルの記事もあわせてどうぞ)。
現役の本音:試験の「基本」が、現場で一番効く

正直、現場で毎日使うのはアクセスポートとトランクポートが中心です。派手な機能より“基本中の基本”がいちばん効く。トラブルの多くも、実は基礎的な設定で起きています。
CCNAの学習では、ポートVLAN・タグVLANのほかに、MACベースVLANやプロトコルベースVLANといった方式も出てきます。「こんなに種類を覚えて意味があるのか」と思うかもしれません。
正直に言うと、現場でよく使うのはポートVLANとタグVLAN(アクセスポートとトランクポート)が中心で、その他の方式にはあまり出会いません。ただ——ここが大事なところですが——現場で実際に必要になるのは、意外なほど「基本中の基本」の部分です。
アクセスポートとトランクポートの使い分け、VLAN IDの管理、両端の設定を揃えること。トラブルの多くは、こうした基礎的なところで起きています。
難しい応用知識より、基本を正確に理解して手を動かせることのほうが、現場ではずっと価値があります。CCNAの勉強が「試験のためだけの暗記」に感じられるときは、この点を思い出してみてください。学んでいる基礎は、そのまま現場の武器になります。
まとめ
- VLANは1台の物理スイッチを論理的に複数に分割し、ブロードキャストドメインを分ける技術。1〜4094のVLAN IDで識別する。
- アクセスポート=末端機器用(1つのVLAN)、トランクポート=スイッチ間用(複数VLANをタグ付きで運ぶ)。
- 現場の落とし穴:VLANミスマッチ(両端の設定一致が必須)、VLAN 1をそのまま使わない、AP接続ポートはトランクにする。
- VLAN間の通信にはL3スイッチによるVLAN間ルーティングが必要。L2スイッチではできない。
- 現場で効くのは応用より基本。試験で学ぶ基礎がそのまま実務で使われる。
実際にVLANを設定するコマンドについてはCCNAのコマンドの記事、IPアドレスの変換についてはNATの記事、CCNAの知識が現場でどう活きるかはCCNAと実務の記事もご覧ください。


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