「L2スイッチとL3スイッチって何が違うの?」——ネットワークを学び始めると必ずぶつかる疑問です。調べれば「L2はMACアドレス、L3はIPアドレスで転送する」という説明はすぐ出てきます。でも、それだけでは実際にどちらを選べばいいのかは判断できません。
この記事では、現役10年のネットワークエンジニアとして、基本的な違いを整理したうえで、現場では何を基準に使い分けているのか、そして初心者が最初に必ずハマるポイントまで解説します。
L2スイッチとは?MACアドレスで転送先を決める機器
L2スイッチは、OSI参照モデルのレイヤ2(データリンク層)で動作するスイッチです。フレームに書かれた宛先MACアドレスを見て、どのポートから送り出すかを決めます。
スイッチは、どのポートの先にどのMACアドレスの機器がいるかをMACアドレステーブルとして記憶しています。宛先が分かっているならそのポートだけに送り、分からなければ全ポートに送って学習する。この繰り返しで、必要なところにだけフレームが流れる状態を作っています。
オフィスの島に置かれているスイッチ、フロアの配線盤に入っているスイッチは、たいていこのL2スイッチです。台数でいえば現場でいちばん多く見る機器だと思います。
L2スイッチはVLANを作ることはできますが、VLANをまたいだ通信はできません。ここが次のL3スイッチとの分かれ目になります。
L3スイッチとは?IPアドレスでルーティングもできるスイッチ
L3スイッチは、L2スイッチの機能に加えて、レイヤ3(ネットワーク層)のIPアドレスを見たルーティングができるスイッチです。
できることが増えている、という理解で構いません。同じVLAN内の通信はL2スイッチと同じようにMACアドレスで転送し、VLANをまたぐ通信はIPアドレスを見てルーティングする。1台で両方こなします。
この「VLANをまたげる」という点が決定的です。部署ごとにVLANを分けた後、部署間で通信させたいなら、どこかにL3の機能が必要になります。L2スイッチだけで組んだネットワークでは、VLANを分けた時点で通信が分断されます。
フロアや拠点の中心に置かれて、配下のL2スイッチを束ねている機器。それがL3スイッチだと思ってもらえれば、現場のイメージとしては近いです。
L2スイッチとL3スイッチの違い|見ているアドレスが違う
まず基本を押さえます。2つの違いは、何を見て転送先を決めるかに尽きます。
| L2スイッチ | L3スイッチ | |
|---|---|---|
| OSI参照モデル | 第2層(データリンク層) | 第3層(ネットワーク層) |
| 見るもの | MACアドレス | IPアドレス |
| 転送できる範囲 | 同一ネットワーク内のみ | 異なるネットワーク間も可能 |
| VLANの作成 | できる | できる |
| VLAN間ルーティング | できない | できる |

どちらもVLANは作れますが、VLAN同士をつなげるのはL3だけ。ここが実務でいちばん効く違いです。この一点をまず押さえてください。
OSI参照モデルの第2層・第3層という区別がピンとこない方は、OSI参照モデルの記事を先に読むと理解が早いです。
【初心者の関門】L2スイッチではSVIが作れない
ここが、初心者が最初に必ずと言っていいほどハマるポイントです。
そして構成をやり直すことになります。私が見てきた中でも、初心者がL2とL3の違いを本当に理解する瞬間は、たいていここです。教科書で「L3スイッチはルーティングができる」と読んで分かったつもりでいても、実際に手を動かしてSVIが作れずに詰まって、ようやく腹に落ちる。
逆に言えば、この失敗は通過儀礼のようなものです。もしあなたが今まさにこれで詰まっているなら、まず使っている機器がL3スイッチかどうかを確認してみてください。
L3スイッチを使う判断基準:規模ではなく「論理設計」から考える

現場でまず考えるのは“ブロードキャストドメインをどう分けるか”です。“規模が大きいからL3”じゃなく、“この単位で分けたいからL3が要る”という順番で考えます。
多くの解説記事は「小規模ならL2、大規模ならL3」という説明をします。間違いではありませんが、現場の考え方とは順番が違います。
私たちがまず考えるのは、ブロードキャストドメインをどう分けるかです。部署別に分けるのか、ネットワークの役割別(サーバ用・業務用・ゲスト用など)に分けるのか——この論理的な設計が先にあります。
「規模が大きいからL3を入れよう」ではなく、「この単位でブロードキャストドメインを分けたい。だからそれをつなぐL3が必要」という順番です。
特に大規模なネットワークでは、ブロードキャストが機器に与える影響も考慮します。ブロードキャストドメインが大きすぎると、不要なトラフィックが全端末に届き、機器の負荷が上がります。
だから適切な単位で分割する。その分割した単位をつなぐために、L3が必要になる。この設計思想を持っていると、「なんとなくL3にしておく」という判断にはなりません。
L3スイッチとルータの違いと使い分け:実は「値段とポート数」
教科書には「L3スイッチはLAN内、ルータはLANとWANの境界に設置する」と書かれています。基本的にはそのとおりです。ルータはNAT機能を持ち、外部ネットワークとの接続を担います(NATの記事も参考にどうぞ)。
ただ、正直に言うと、機能面での違いはそこまで大きくありません。現場で実際に判断材料になるのは、もっと現実的な要素です。
- ポート数:ルータはポート数が少なく、L3スイッチは多い。多数の機器を収容するならL3スイッチ。
- 値段と性能:この2つは性能も価格帯もかなり違います。必要な性能に対して過剰な機器を入れればコストが跳ね上がります。
「LAN内かWAN境界か」という理論的な区分も大事ですが、実務ではポート数が足りるか、予算に見合うか、という判断がかなりの割合を占めます。この現実は、あまり教科書には書かれていません。
「L3は上位互換だから全部L3でいい」は危うい
まとめ:L2スイッチとL3スイッチの使い分け
- L2スイッチはMACアドレスで同一ネットワーク内を、L3スイッチはIPアドレスで異なるネットワーク間を転送する。
- どちらもVLANは作れるが、VLAN間ルーティングができるのはL3スイッチだけ。
- 初心者の関門はSVIが作れずにやり直すこと。ここでL2/L3の違いが体に染みる。
- 現場の判断は「規模」よりブロードキャストドメインの論理設計が先。
- L3スイッチとルータの使い分けは、実務ではポート数と値段が大きな判断材料になる。
- 「L3は上位互換」だからといって全部L3にするのはコスト的に非合理。適材適所で。
CCNAで学ぶ知識が現場でどう活きるかはCCNAと実務の記事でも書いています。


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